レジリエンス(resilience)やレジリエント・シティ(resilient city )といった言葉をご存知でしょうか。近年,この言葉がまち作りや政策目標の観点から注目されています。

レジリエンスとは?

レジリエンスは英語で回復力,立ち直る力,強靭さとった意味を持ちます。都市計画や行政の観点では,レジリエンスとは都市に降りかかる災害や危機,危険に対する耐性を指し,長期に渡って繁栄を確保するための都市としての強靭さを意味します。また,ここで想定される危険とは,大規模な自然災害等の突発的な出来事だけではなく,魅力ある都市としての存亡に影響を及ぼす様な慢性的な要因,例えば,人口減少,環境汚染,貧困等の問題を含みます。

2013年,アメリカの慈善団体であるロックフェラー財団は,「100のレジリエント・シティーズ(100RC)」というプロジェクトを開始しました。これは,世界中の都市から100都市を選定し,財団からの支援の下レジリエンス戦略を策定し,国際的ネットワークを構築するためのプロジェクトです。日本からは京都市と富山市が選定されました。

プロジェクトの詳細については「100のレジリエント・シティーズ(100RC)」(英文)をご覧下さい。

 

レジリエンス・シティとしての京都

このプロジェクトに選定されたことをきっかけに,京都市レジリエンス推進本部が2017年7月4日に発足し,京都をよりレジリエントなまちに育てるためにはどの様な対策が必要か議論されています。京都では,地域の絆,文化・芸術,町並みと言った京都独自の強みを活かし,自然災害および人口減少等の差し迫った危機やその他想定外の危機にも対応・適応出来る都市としての耐性を高める方策が議論されています。

もちろん自然災害や人口減少などに関しては個別に対策が練られているところですが,これらの方策を全て一つの視点から繋ぐ上位概念がレジリエンスなのだと思います。都市の繁栄のための長期的視点を明確に意識するために,上位概念としてレジリエンスは有用なのだろうと思います。

 

考えて見れば,京都は千年以上日本の都であった歴史があり,現在でも都市として機能しているので,レジリエント・シティの代表とも言えます。都市を維持し,継続して発展させるための知恵や方策は,レジリエンスという概念が提唱される遥か以前から京都には根付いていたはずです。しかし,これからの都市は人口減少など未だに体験したことのない危機にも直面するでしょう。モデルケースのない世界ですから,どの様な危機にも対応できる柔軟性や都市としての強靭さが要求されます。実際京都レジリエンス戦略においても,行政分野を超えた横断的な政策の融合及び市政府と地域の市民,企業,大学との協働の必要性が説かれています。

次の千年において,京都が更に素晴らしい都市となるためにはどの様な視点や戦略が必要なのでしょうか。一市民として,京都レジリエンス戦略の今後が気になるところです。

山村真登

弁護士・ニューヨーク弁護士 山村真登
2008年The University of Adelaide(オーストラリア連邦) 商学部国際ビジネス科卒業,2012年同志社大学法科大学院修了,2018年New York University School of Law (アメリカ合衆国ニューヨーク州) LL.M 修了,2019年ニューヨーク州弁護士登録。 京都や関西の企業に対し,国際的な取引や活動全般に関してアドバイスを行う他,外国人事件,事業承継や相続等に関する紛争,個人の賠償請求等に関する訴訟等も数多く手掛けている。企業のCSR活動に対するアドバイスの実績もある。