昨今の英語教育の低年齢化の波から,子を小学校からインターナショナルスクールに通わせたい,国際的な水準の教育を受けさせたいとの希望される方も多いと思います。学費や学校の評判なども当然考慮しなければなりませんが,インターナショナルスクールについては法律上の扱いについても考慮が必要となります。

そもそもインターナショナルスクールとは何なのでしょうか。一般の公立または私立の学校とは異なるものなのでしょうか。弁護士の視点から考察します。

法律上は「各種学校」の扱い

現状,インターナショナルスクールについて定義・言及した法律はありません。しかし,文部科学省は,「一般的には主に英語により授業が行われ,外国人児童生徒を対象とする教育施設」と捉えています(詳しくはここをご覧下さい)。ここで言うインターナショナルスクールとは特定の民族の子のみを対象とする民族系学校とは別のものです。

インターナショナルスクールの多くは,学校教育法第1条の規定する「小学校」や「中学校」(いわゆる1条校)とは別の存在で,学習指導要領に則っているわけではありません(一部のインターナショナルスクールの中には1条校となっているも存在しますが,このブログでは1条校以外のインターナショナルスクールを対象としています)。

 

学習指導要領に従ってはいないので,授業は基本的に英語で行われ,また個性豊かな教育が施されていることが特徴ですが,法律上多くは「各種学校」という扱いになっています(学校教育法第134条)。驚きかもしれませんが,法律上は,自動車学校や芸能学校(有名なものとして宝塚音楽学校)と同じ分類とされているのです。

 

学習指導要領に従っている訳ではないインターナショナルスクールに関しては国際バカロレア(IB)の認定を受けていることが教育水準の証となります。国際バカロレアとは,国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラムです。世界の多くの国々の大学において,大学入学資格として幅広く受け入れられており,国際バカロレアの認定を受けた学校にて高校教育まで修了することにより,世界中の大学へ進学するチャンスを手にすることが出来ます。

 

子をインターナショナルスクールへ通学させる場合には,当該学校が国際バカロレアの認定を受けているかどうかが重要な指標となります。例えば,ここ京都における京都インターナショナルスクールは,国際バカロレアの認定を受けています。

就学義務を満たす?

教育基本法第5条は,「国民は,その保護する子に,別に法律で定めるところにより,普通教育を受けさせる義務を負う。」と就学義務を定めています。インターナショナルスクールは学校教育法第1条の「小学校」でも「中学校」でもありませんので,インターナショナルスクールに通学させても就学義務を満たしたことにはなりません。もっとも,外国から帰国したばかりであるとか重国籍である等学校教育法第18条に定めるやむを得ない事由があれば,普通教育の就学義務は免除され得ます。

 

なお,学校教育法上,就学義務に違反する保護者に対しては罰則も用意されています(同法144条)ので注意が必要です。他方で,子をインターナショナルスクールに通学させたということを理由にこの規定が適用された事例は,少なくとも判例検索システム上は見当たりませんでした。実際上,就学義務の免除事由に該当しない場合にインターナショナルスクールへ通わすかどうかは保護者の判断によるところが大きいものと考えられます。

 

地位向上の動き

しかし,このようなリスクがあったとしてもインターナショナルスクールへ通わせたいとの要望が絶えないのは,それに見合う教育的効果があると考えている保護者が多いからだと思います。社会の側から見ても,英語能力やコミュニケーション能力に優れたインターナショナルスクール出身の生徒の能力を積極的に受け入れ,活用していくことが望ましいことは言うまでもありません。実際,国際バカロレアの認定を受けた学校については,積極的に認知していこうという動きが確認できます。

 

内閣総理大臣が開催する教育再生実行会議における第四次提言(平成25年10月31日)では,「大学は,入学者選抜において国際バカロレア資格及びその成績の積極的な活用を図る。国は,そのために必要な支援を行うとともに,各大学の判断による活用を促進する。」と宣言されています(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/teigen.html)。

 

これを受け,日本の各大学でも国際バカロレアのスコア等を活用した入試が実施され始めています。

国際バカロレアの資格は海外の大学でも評価されますので,国際バカロレア認定のインターナショナルスクールに通学させることで,

・海外の大学へ入学する場合に有利となる

・日本でも大学入学の資格を得ることができる

ことが期待できます。

現在,大学進学の場面に限っていえば,国際バカロレア認定のインターナショナルスクールへ通学させることによる不利益は小さく,むしろ子の選択肢の幅を広げることにも繋がると思われます。

(文責:弁護士 山村真登

弁護士・ニューヨーク弁護士 山村真登
2008年The University of Adelaide(オーストラリア連邦) 商学部国際ビジネス科卒業,2012年同志社大学法科大学院修了,2018年New York University School of Law (アメリカ合衆国ニューヨーク州) LL.M 修了,2019年ニューヨーク州弁護士登録。 京都や関西の企業に対し,国際的な取引や活動全般に関してアドバイスを行う他,外国人事件,事業承継や相続等に関する紛争,個人の賠償請求等に関する訴訟等も数多く手掛けている。企業のCSR活動に対するアドバイスの実績もある。