事務所創立30周年を前にして

〜トラブルに直面した場合の心構え Part2〜

 

パート1についてはこちらをご覧下さい。

 

 前号においては,トラブルに直面したときに如何にして冷静になるか,事態を客観的に分析することが如何に大切であるかなどについて述べさせて頂きました。

 本号では,気持ちを落ち着かせた後,具体的にどういう行動を選択するか,その際の心構えなどをご説明させていただきます。

  • ルールを守ってトラブルを解決すること

 まず守って頂かねばならないことは,ルールに従ってトラブルを解決するという当たり前のことを再確認して頂く必要があるということです。ルールを守らなければトラブルは拡大します。ではどういうルールに基づいてトラブルを解決していくかですが,このことについては,ご信頼して相談された身近な方でも判断が難しいかもしれません。

 ご相談した方に仲裁の労を執って貰うことで解決できる問題も少なからずあるでしょうが,深刻なトラブルはそれでは解決しません。感情的になって問題を複雑化させてしまう危険性もあります。

  • 裁判を怖がらないこと

 ではどうするのかですが,まずは心構えとして,『裁判を怖がらない』という覚悟を持って頂きたいと思います。

 裁判や訴訟というと大げさに聞こえ,回避したいお気持ちになられると思いますが,我々が抱えた個別具体的な紛争,トラブルを法律に基づいて正しく解決するための手続きが我々の社会にはいろいろと準備されております。決して訴訟ばかりではありません。『使わない手はない』ということをご理解して頂きたいのです。

 この覚悟が持てるようになれば,トラブルはもう解決方向に向かっているといっていいでしょう。

  • 事実経過を記録すること

 次に,少し面倒ですが具体的な作業として,起こったトラブルの顛末を,いつ,どこで,誰との間でどういうことが起こったのか,どういうやりとりがあったのかを時の流れに従って順次詳しくメモして下さい。

感想は書いて頂く必要はありません。客観的な事実を順次書いて下さい。このメモは,記憶の薄れないホットな時期から作成して頂くとよりいいものが出来上がります。そして,もう一踏ん張りしていただいて,そのメモを裏付ける文書,メール,録音,写真などを探して保存するようにして下さい。

 ここまでの心構えと準備が整えば,問題解決への勇気を自覚するでしょうし,弁護士へ相談する気持ちも固まってくるだろうと思います。

 

弁護士による紛争解決とは

 どういう弁護士に依頼するべきかという問題もありますが,少なくとも弁護士に依頼してトラブルを適正に解決しようという気持ちが強くなれば,遠くに感じていた弁護士が近いものとしてイメージできるようになると思います。容易に解決できそうにないトラブルを抱えられた場合は,やはり法律事務所をご訪問なさることをお勧めします。なぜならば,先ほど『使わない手はない』と述べました種々の司法制度の一翼を担うために適正なものとして制度化されたのが弁護士だからです。

 

 私たち弁護士は,ご相談を受けた場合,事実関係を客観的に把握することに努め,有利な事実,不利な事実を見極め,どういう手続きを選択して解決に導くべきかを合理的に判断します。皆様の方でご準備頂きましたメモや裏付けは面談時に弁護士にお示し下さい。これがあると弁護士も迅速,的確な判断が可能になります。そして皆様のお気持ちや感想も十分に弁護士にお伝え下さい。

 

 相談を受けた弁護士は,多くの案件においては,すぐに裁判するのではなく,相手方と交渉を進めトラブルの解決を探るのが一般的です。この段階で,ある程度のトラブルは適正に解決されます。これは,私たち弁護士が,交渉で解決に至らなければ,司法制度を利用して問題を適正に解決することの確信と覚悟を持って臨んでいるからです。

 

 どうしても交渉や他の手続きで解決できないトラブルについては,訴訟の場で解決を図っていきます。弁護士は訴訟での解決を迅速かつ適正に行うための訓練を積んできております。

 

 法律に基づいた手続きであり,ある程度の時間を要することは覚悟しなければなりませんが,必ず問題は解決します。必ずしも主張が100%認められるとは限りませんが,納得できる結論にたどり着けると思っていただいていいと思います。トラブルに直面された方は,「トラブルを解決するために司法制度を利用する権利がある。」ということを思い出していただき,できる準備をしていただいて弁護士を身近なものとしてご利用なられることをお勧めする次第です。

 

 いかがでしたでしょうか。少しでもご参考になりましたら幸甚です。

 パート1についてはこちらをご覧下さい。

事務所創立30周年を前にして 〜トラブルに直面した場合の心構え Part1〜

 

文責 所長弁護士 山村忠夫

 

所長弁護士 山村忠夫
1987年弁護士登録,1990年当事務所設立,2003年京都弁護士会副会長。 京都や関西の企業やその他法人に対し長年に渡って日常的に法的アドバイスを行なってきた。また,不動産事件,交通事故・医療訴訟,倒産事件で多くの解決実績がある。 趣味はゴルフ。