前回のブログでは,インターナショナルスクールとその法的地位を説明しました(前回ブログ インターナショナルスクールと法)。前回のブログで述べた通り,現在では,日本でもインターナショナルスクールの出身者に対して広く高等教育への進学の機会が与えられています。しかし,インターナショナルスクールの学校としての地位は,学校教育法第1条に規定されたいわゆる「1条校」と比べて不安定なものです。

 

このような環境の中で,インターナショナルスクール教育の意義はどのような点にあるのでしょうか。今回は,経済的な観点から日本のインターナショナルスクールの今後について考えたいと思います。

インターナショナルスクールでの教育の重点

一般に,インターナショナルスクールにおける教育は日本の一般の公立・私立学校と比べて,以下のような能力の教育に比重を置いていると言えます。

・英語でのコミュニケーション能力

・異文化を理解力,適応力

文部科学省は,インターナショナルスクールを「一般的には主に英語により授業が行われ,外国人児童生徒を対象とする教育施設」と捉えています。このような定義からも分かる通り,通常の日本の学校では,日本語を用いて英語を習うのに対して,インターナショナルスクールでは全ての教科を英語で習います。「英語を習う」と「英語で習う」の違いは明確で,英語に接する機会では圧倒的な差がありますから,この点については異なるのが当然と考えられます。

 

また,日本にいてはまだまだ異文化との触れ合いは限られていますが,インターナショナルスクールには多種多様なバックグラウンドの生徒がたくさんいることから,自然と異文化を理解する素養を養うことも当然期待できるかと思います。

 

様々なインターナショナルスクールがあり,また,最近では英語教育に特化したプログラムのある私立学校なども存在するため,必ずしも一般化できる訳ではありませんが,グローバルに活躍出来る人材育成に役立っているということは言えそうです。実際に,元ソニー社長の平井一夫氏など,経済界で活躍するインターナショナルスクール出身者も多数います。

 

経済界のインターナショナルスクールへの期待

経済界は,インターナショナルスクールをどのように捉えているのでしょうか。少し古いものですが,経団連は,2002年に日本のインターナショナルスクールの問題に対し,提言を行なっております(内容についてはこちらをご覧下さい)。

これによれば経済界はインターナショナルスクールに対して概ね次のような機能を期待しています。

 

・国際的に通用する人材の育成機能

グローバルな競争社会においては,語学力のみならず,「自分の考えを伝える能力」,「異文化を理解する能力」,「説得力のある論理構成を組み立てる能力」,等の能力が必要とされますが,インターナショナルスクールでの教育環境はこのような能力を養うのには適切な環境と言えます。

・帰国子女の受入機能

帰国後,インターナショナルスクールに入学すれば,海外で培った貴重な国際能力をそのまま維持することが期待できます。これにより,海外に暮らす親たち(駐在員等)は,その後の進学について懸念することなく子どもに国際的な経験・学業を受けさせることが可能となります。

・外国企業・人材の受入機能

海外企業の日本進出は日常的に行われています。加えて,日本の企業においても人材のグローバル化が現実に起きています。インターナショナルスクールを設けることにより,積極的に外国の大企業や有能な外国人労働者を誘致することが出来ます。

 

経済界からは,地域における国際交流や国際教育の拠点としての役割だけでなく,ビジネスや人材誘致のための経済インフラとしての機能も期待されています。

 

インターナショナルスクールの今後

インターナショナルスクールと聞くと,華やかなイメージがあるかもしれませんが,学校教育法の1条校ではないため,補助金等を受けることが出来ず,実際は厳しい経営状況となっているものもあるようです。このような現状もあってか,経団連は,「インターナショナルスクールについては,特例措置として,一条校(学校教育法第一条の規定する学校)に準ずる教育機会として認めるべきである」,「将来的には,自己責任において多様な教育サービスから自由に選択できるという新しい発想に基づく教育制度を導入することを検討すべきである」とまで提言しています。

インターナショナルスクールのカリキュラムは学習指導要領に従っておらず,普通教育を行う1条校と差が設けられているのは止むを得ないことです。しかしながら,前回コラムで述べたように実際上は1条校と並んで学校として機能していることや上述したような経済界からの要望や期待があることからすれば,その他の各種学校(自動車学校や芸能学校等)と全く同じ扱いで良いかについては疑問の余地があります。

経済的な視点も取り入れつつ,将来の地域におけるインターナショナルスクールの姿を積極的に協議していくべきかと思います。

(文責:弁護士 山村真登